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新宿駅。山手線のホームからエスカレーターで降りていくと、下の方に人がうねっているのが見える。まるでどぶ川に浮かぶゴミのようだなとふと思う。「人がゴミの様だ」と口にしたら意味が分かって笑う奴もいるだろうかと考える。ともかく、そこから何か蹴躓くように気分がうんざりしていくのが分かる。これでもまだラッチ内は人が流れているから良いが、ラッチを出るとあちこち好き勝手に動き回ったり留まったり、酷いことになる。一人避けると全て避けなければならなくなる。
すると脇をするりするりと人を避けながら進んでいく男がいた。JRの係員だ。見事に人を避けて前に進む。私のように胸を張り顎を引いて歩いていてはJRの係員なぞ勤まらないだろう。それにしても泳ぐように進む。
感心して横目で見ていると、その係員が地上への出口へ向かう通路の角で歩みを緩める。大回りに彼の横に回り込むと、進み始めた彼の前方の階段には大きな紙ゴミがいくつも捨てられていた。バッグやブーツの詰め物に使うような、ハトロン紙みたいのを丸めたゴミだった。ゴミの状態を確認して、係員はそれを手に取り抱え込む。汚いゴミでなくて良かったな、と心の中で声を掛ける。
私が彼の横を抜けて階段を上り始めると、上の方に一人立つ男がいた。50代のくたびれたサラリーマン風の男。ベージュのようなグレイのような薄い皺だらけのコートのポケットに手を突っ込み、ゴミをかき集めるJR係員を見ている。口の端を歪めてにやにやしている。まるで小馬鹿にしているように、にやにやとしているのだった。
私は厭な気持ちになり、衝動的に男を階下に蹴り落としたくなったが、ふと思い留まり階段を登り切った。登り切り、交差点を渡り初めてから、やはり蹴り落としてやれば良かったと、急に腹が立ってきたが、とりあえずビールでも呑んで帰ることにした。
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